飲食店にとって、実は料理の味やサービスと同じくらい大切な「内装デザイン」。
おしゃれな雰囲気で居心地が良ければ、リピーターが増え、SNSで話題になりやすくなります。
本記事では、飲食店の集客に直結する内装デザインの考え方から具体的な実例、費用や業者の選び方について解説します。
飲食店の内装が集客に与える影響

飲食店の内装は、来店した瞬間にお客様の印象を決め、食事の満足度にも大きく関係します。
見栄えの良さだけではなく、席のレイアウトやテーブル・椅子の使い勝手など「飲食のしやすさ」が整っていることが大切です。
第一印象がリピート率を決める
人は初めてのお店に行くと、最初の数分でその店の印象を判断すると言われています。これは「初頭効果」といい、出会った直後の印象がその後の評価を大きく左右するためです。
とある調査データで、外食に関する興味深い結果が公表されています。

(出典:アクティブ・メディア株式会社(「レストラン★スターアプリ」運営)、株式会社ビリオンフーズ(「リピつく」運営)の共同調査「外食に関する意識調査」)
「過去に利用したことがあるお店に再度行く主な理由は何ですか?(複数選択可)」という質問に対して、トップに「食事の味や品質」、「価格」が挙がっています。
しかし、それに続く理由として「店の雰囲気がよく居心地がいいから」が選ばれており、味や価格と同じくらいお店の空間そのものがリピート意欲の大きな要素であることが分かります。
ターゲットに合う内装が集客力を高める
飲食店の内装は「誰に来てほしいか」で正解が変わります。
たとえば女子会やママ友とのランチを狙う店なら、席と席の間隔が狭いと周囲の会話が気になり、ゆっくり話せません。
古びた壁紙や清潔感に欠ける雰囲気も敬遠されがちです。
逆に、量と回転率を重視する中華料理店などでは、多少内装が古くても味や価格、提供スピードが支持につながります。
SNS映えが口コミ拡散を生む
「食べログ」や「ぐるなび」といったグルメサイトだけでなく、壁面アートや間接照明、カトラリーへのこだわりが、SNSでの拡散に効果的です。
SNSに投稿されると新しい来店客の目に留まりやすくなり、広告費をかけずに認知度が広がるため、結果的に売上アップにも直結します。
【基本】飲食店内装デザインの考え方

内装デザインを成功させるには、見た目と同時に機能性も考える必要があります。
①店舗コンセプトに合わせる
コンセプトと内装が一致していると、ブランディング効果が高まります。
「和食店であれば木材や障子を活かす」「カフェならナチュラルな素材を取り入れる」など、来店者が「思った通り」と安心できる空間を演出しましょう。
②動きやすい機能的な導線設計を行う
飲食店の導線設計では、軸におきたいことが2つあります。
1つ目は「スタッフが料理を運びやすいこと」。
居酒屋などでは、アルバイトの人数が少ないのに店が広い、というケースが見られます。スタッフが店内を行ったり来たりする回数が増え、料理提供が遅れてしまいます。
結果、「料理は美味しいのにサービスが遅い」という評価につながりかねません。
2つ目は「お客様が出入りしやすいこと」。
たとえば縦長の店舗でレジが奥にあると、出口近くに座ったお客様は一度奥まで行って会計を済ませ、また入口まで戻らなければならず、とても不便に感じます。
③照明で雰囲気を演出する
明るさや光の色で、食欲や心理的な印象は大きく変わります。
- 料理を美味しく見せたいなら電球色
- 作業効率を重視する厨房は昼白色
など、ゾーンごとに調整するのが理想です。
また、昼は自然光、夜はバーのような落ち着いた演出をすることで、2つの顔を持つお店作りもできます。
④店舗イメージに沿って配色を決める
色は雰囲気づくりに直結します。
- シックな高級感を与えるなら黒ベースやモノトーン
- アイスやパフェを売りにするなら黄色やピンク、オレンジなどポップな色
上記のように店舗イメージや客層に合わせた効果的な配色を意識しましょう。
飲食店のおしゃれな内装デザインタイプ6選

本章では、実際に飲食店に人気の6つのデザインタイプを紹介します。
高級レストラン風デザイン
高級レストランを思わせるには、重厚な家具やシャンデリア、間接照明で特別感を演出し、広めのテーブルでゆったり感を出しましょう。ただし、回転率とのバランスは意識するようにしてください。
例:帝国ホテルのレストランのような雰囲気
モダン・スタイリッシュデザイン
近年、こだわりの珈琲を扱うお店などに多いのが、モノトーンやガラス素材を活かした都会的なデザインです。清潔感があり、若いビジネス層に人気があります。
例:スターバックスコーヒー
ナチュラル・カフェ風デザイン
カフェ系に多いのが、木材や観葉植物を取り入れた温かみのある空間です。自然光と相性がよく、女子会など長居しやすい雰囲気があります。
例:コナズ珈琲
和モダンデザイン
和モダンは、障子や木材を現代的にアレンジしたデザインです。落ち着きと個性があり、より細部まで和風にこだわることで、外国人観光客にも好まれます。
例:星野珈琲
カラフル・ポップデザイン
カラフル・ポップデザインは、鮮やかな色彩と遊び心ある装飾で楽しい雰囲気になります。写真映えしてSNSでも拡散されやすいのが魅力です。
例:サーティワンアイスクリーム
サラリーマン層や年配客にとっては「落ち着く」「気取らず入れる」と感じられるため、常連づくりにつながりやすいスタイルです。
レトロ・昭和風デザイン
懐かしさや親しみやすさを演出できるのが「レトロ・昭和風デザイン」です。サラリーマン層や年配客にとっては「落ち着く」「気取らず入れる」と感じられるため、常連づくりにつながりやすいスタイルです。
例:世界の山ちゃん
飲食店の内装にかかる主な費用

飲食店の内装費用は、規模やデザインによって大きく変わります。代表的な内訳は以下にまとめました。
床・壁・天井の費用
清潔感や耐久性を保つための基本的な内装工事です。木目調などをアクセントにすると、店全体の雰囲気が良くなります。
その分価格も上がるため、消耗の早い飲食店では費用対効果を考えましょう。
床 | ・塩ビシート:3,000~5,000円/㎡ ・無垢フローリング:15,000~30,000円/㎡ |
壁・天井 | ・クロス:1,200~2,500円/㎡ ・塗り壁(珪藻土など):5,000〜8,000円/㎡ ・タイル貼り:10,000〜50,000円/㎡ |
厨房・水回り・空調の費用
飲食店の心臓部分である設備工事です。衛生基準を満たす設備や排気ダクト、空調は売上や回転率に直結するため、優先的に投資すべきポイントです。
厨房(新品の場合) | ・主要設備(コンロ、フライヤー、冷蔵庫等):200〜500万円 ・給排水工事:100〜200万円 |
水回り | ・客用トイレ設置・改修:50〜150万円 ・手洗い設備:20〜50万円 |
空調 | ・業務用エアコン:150〜300万円/約20坪 ・厨房の排気設備:100~200万円(ダクト工事込) |
家具・照明・装飾の費用
お客様が最も長く触れるのが家具やテーブルまわり。
テーブルと椅子の高さのバランス、皿のサイズに合わせたテーブル幅など、実際の使い心地を意識することで「居心地の良さ」が変わります。
家具(椅子・テーブル) | ・スタンダード:5~15万円/セット ・デザイナーズ・特注:1セット30万円超もある ※20席の店舗では、家具代だけで100~400万円程度 |
照明器具 | ・LEDダウンライト:5,000~15,000円/台 ・シャンデリア:5~20万円/セット (物によってはそれ以上) |
装飾 | 観葉植物・アート・オブジェ等:50~150万円程度 |
装飾は追加・変更しやすいため、開店後の売上を見ながら投資することも可能です。
内装工事業者を選ぶときのポイント

内装工事は、業者選びを工夫することにより、同じ工事でも予算を抑えつつ納得の仕上がりにできます。複数社の見積もりを比較するのはもちろん、飲食店の事情を理解してくれる業者を選びましょう。
飲食店の施工実績の豊富さ
飲食店ならではの水回りや換気、導線の工夫を理解しているかどうかは、とても大きなポイントです。
施工経験がない業者だと、専門的な部分を外注に回すことがあり、その分コストが高くついてしまうケースもあります。
オフィスや物販の施工経験が豊富でも、飲食店は勝手が違うため注意が必要です。
提案力とサービスの質
施工時、「こちらが言った通りのものを作ってもらう」だけでは心もとないでしょう。
実際の営業シーンを想定しながら、デメリットや開業後の維持コストなど、具体的な相談に乗ってくれる業者だと安心です。
また、客席部分はコストをかけた仕上げ、スタッフしか使わない裏方やトイレ等は費用を抑える、といった柔軟な提案をしてくれることもあります。
充実したアフターサポート
お店をスタートすると、ちょっとした不具合や修繕箇所が出てきます。そんな時に「すぐ来てくれる業者かどうか」で安心感は大きく違います。
特に厨房や空調が急に止まったら営業自体ができません。そうならないためにも、困った時にすぐ動いてくれるかどうかは、とても大事なチェックポイントです。
まとめ

飲食店の内装デザインは、単なる「見た目」ではなく、集客・回転率・リピート率に直結する経営戦略の一部です。テーブルや椅子の高さ、皿のサイズ感、個室の使い方など細部に気を配ることで「また来たい」と思わせる空間が生まれます。
おしゃれさと機能性、その両方を意識した店舗づくりが、結果的に売上アップにつながります。