日帰りでさっと観光して帰る――そんな奈良のイメージに、今、少しずつ変化が生まれています。
近年は「滞在型観光」の傾向が強まり、それにあわせて、ふらっと立ち寄れる小さなお店へのニーズが広がってきました。
この記事では、奈良という地域にフォーカスしながら、今なぜ開業のチャンスがあるのか、どんな立地や業種が注目されているのか、そして小さく始めても成功を狙いやすい理由について、現地の動きとあわせて詳しくお伝えしていきます。
奈良県の特徴・特性とは

歴史と文化が色濃く残る奈良県。京都や大阪に隣接しながらも、独自の落ち着いた雰囲気とゆとりある街並みが魅力です。
全国的に見れば派手な開発が少ない分、観光地でありながら地元の暮らしに根ざした空気感があり、「観光客にも、地元の人にも、ふらっと立ち寄られる店」が成立しやすいエリアとも言えます。
ここでは、奈良での開業を検討するうえで知っておきたい基本的な特徴を、アクセス・賃料相場・観光動向の3つの視点から整理していきます。
アクセスのしやすさ|大阪・京都からの距離感が「ちょうどいい」
奈良県は、近鉄やJRを使えば大阪市内から約40分、京都からは約35分と、関西主要都市からのアクセスが非常に良好です。特急や快速電車が豊富に通っており、観光客だけでなく地元通勤者や学生も多く利用しています。
奈良には多くの観光名所がありますが、特に代表的な場所といえば、「奈良公園」「東大寺」「法隆寺」の3箇所。
奈良市中心部の近鉄奈良駅からは、奈良公園や東大寺まで徒歩圏内と回遊しやすく、散策型の観光にぴったり。
一方、法隆寺はJR奈良駅から電車で約15分ほど西に位置し、落ち着いた郊外型観光スポットとして親しまれています。
都市部からのアクセスの良さと、こうした観光名所の広がりが、出店場所の選択肢を豊かにしています。
坪単価の比較|東京・大阪・京都よりもかなり低水準
奈良での開業が「小さく始めやすい」と言われる理由のひとつが、テナント賃料の安さです。
たとえば駅近エリア(近鉄奈良駅周辺)で見ても、坪単価は1万〜2万円前後が中心。これは、他県の都心部と比べると、かなり低めの水準です。
- 東京(新宿・渋谷):平均3.5万~6万円以上
- 大阪(梅田・なんば):平均3万〜5万円以上
- 京都(京都市中心部):平均2.5万~4万円程度
東京の新宿・渋谷エリアなどと比べると、1/3〜1/4程度に抑えられる物件も多く、初期投資のハードルが大きく下がります。「まずは小さく試してみたい」「固定費をできるだけ抑えたい」といったニーズにぴったりの環境です。
観光客の推移|ゆるやかに「宿泊型観光」が増加中
コロナ禍で一時減少した観光客数ですが、奈良ではここ数年、外国人観光客を中心に回復基調が続いています。
奈良市観光協会のデータによると、2025年5月の延べ宿泊客数は前年同月比17.1%増(日本人宿泊者:13.0%増、外国人宿泊者:36.1%増)という大幅な伸びを記録。現に、奈良県ではホテルの新規開業が続いています。
ノボテル奈良(2024年9月4日開業)
華ならまち(ならまちエリア、2024年開業)
今昔荘 奈良 ならまち 蒸風呂邸(ならまちエリア、2024年開業)
奈良の舎(ならのや)(近鉄奈良駅周辺、2024年開業)
VILLA COMMUNICO(奈良公園周辺、2024年開業)
星のや奈良監獄(2026年春開業予定)
奈良ホテル(リニューアル:2026年9月予定)
※「ならまちエリア」とは、奈良市の旧市街地で、興福寺の門前町として栄えた歴史的な町並みが残るエリアを指します。(近鉄奈良駅から南へ徒歩10~15分ほどの範囲)
規模を広げたり、リブランドして再スタートするホテルも多く、ホテル業界の動きは今とても活発です。宿泊施設の整備が進んだことで、店舗ビジネスのスタイルも多様化し、さまざまなターゲット層に向けた店づくりが注目されています。
一方で、まだまだ大型チェーンの出店が少ないため、個人店が存在感を発揮できる土壌が残っているのも大きな魅力です。
なぜ今「小さく開業」が奈良でおすすめなのか?

テナントを借りて開業するのは、決して小さな決断ではありません。ですが、今の奈良なら初期投資を抑えた「スモールスタート」でも十分勝負ができる理由があります。
理由①:観光客だけでなく「地元客」との接点も持てる
奈良は都市規模が大きすぎない分、観光と日常生活が混じり合う街です。
- 駅前の商業エリアでは、地元の会社員や学生も多く通行
- 観光地でも、近隣住民が日用品を買いに通う動線がある
だからこそ、観光に依存しすぎない「地域密着型+観光寄り」のバランスがとりやすいのが奈良の特徴です。
理由②:散策エリアで小型テナントも需要がある
奈良市内やならまちエリアなどには、10〜15坪程度のコンパクトな空き店舗も多く見かけます。
- 家賃相場が他の観光地に比べて安め
- 小規模でも内装に工夫すれば魅力的に演出できる
- 飲食・物販・サービスなど幅広い業種に対応可能
「まずは小さく始めてみて、手応えを見て広げたい」という方にはぴったりの環境です。
理由③:人材確保が難しい時代でも取り組みやすい
今の時代、アルバイトやパートの採用が思うようにいかない…という声をよく聞きます。特に、飲食業や接客業では、人手不足は深刻な問題です。
そんな中、奈良のようなコンパクトな観光地で、10坪前後の小さなお店をひとりで運営するというスタイルは、現実的かつ理にかなった選択肢です。
まずは小さく開業して、じっくり足元を固めながら、常連さんやリピーターを増やしていく。
そんな「無理なく長く続けられる店づくり」が、奈良では実現しやすい環境にあります。
奈良での開業、注目は「立ち寄り型」

小規模開業を成功させるには、業種選びも重要です。奈良で今おすすめしたいのは、観光客と地元客の両方にウケる「立ち寄り型」業態です。
以下で特におすすめの3つの業種、形態を紹介します。
① テイクアウトに強いカフェ・焼き菓子店
- 滞在中に「お茶したい」「ちょっと休憩したい」ニーズは根強い
- 手土産需要を見越した焼き菓子やスイーツも◎
- テイクアウト対応なら省スペースでも運営しやすい
② 奈良を感じる雑貨・お土産系の物販
- 鹿や和柄をモチーフにしたオリジナル商品
- ハンドメイド作品や地元作家とのコラボ商品
- 見た目で「映える」「持って帰りたい」と思わせる演出が鍵
③ 少人数制の体験型ワークショップ
- 和紙、陶芸、墨絵などの体験を1〜2時間で提供
- 1日3回開催などで時間制・予約制にすることで効率化
- 小さなスペースでも「記憶に残る体験」が提供できる
奈良での開業、立地の狙い目は「観光+日常の交差点」

店舗ビジネスは、単純に「人通りが多い=売上が出る」とは限りません。奈良での立地選びでは、次のポイントを意識しましょう。
駅から観光地へ向かう「導線上」かどうか
近鉄奈良駅を降りて、東向商店街をぬけるとすぐに見えてくるのが猿沢池。そのまま足をのばせば、鹿のいる奈良公園や東大寺へと続いていきます。
このルートは、観光で訪れた人はもちろん、地元の人も買い物に通る定番コース。まさに「歩いて楽しむ奈良」の中心です。
【例:近鉄奈良駅〜東向商店街〜奈良公園の間】
賑やかすぎず、観光と日常がちょうどよく混ざる場所。ふらっと立ち寄れるカフェや和スイーツのお店が多く、人の流れをうまくつかみやすいエリアです。
通勤・通学でも利用される場所か
観光客が少ない平日でも、人の流れがあるかどうかは大事なポイント。
JR奈良駅から三条通を東へ進む道は、地元の人が通勤や通学でよく使うルートで、朝や夕方には歩く人の姿が絶えません。
【例:JR奈良駅〜三条通エリア】
宿泊施設も多く、出張や旅行で滞在する人たちが周辺を歩いています。お昼どきの食事や、帰り道にちょっと立ち寄れるお店など、生活に寄り添ったお店づくりがしやすい場所です。
「ちょっといいお店が集まるエリア」もおすすめ
昔ながらの町家が残る「ならまち」は、のんびりと歩きながらお気に入りを見つける楽しさがあるエリアです。
観光地のにぎやかさとは少し違い、静かで落ち着いた雰囲気の中に、雑貨屋さんやカフェが点在しています。
【例:ならまち周辺】
→ 「こんなところに、こんなお店が?」と嬉しい発見があるのが、ならまちの魅力。雑貨屋さんや手作り菓子のお店など、“こだわり”が伝わる小さなお店がとてもよく似合います。
奈良での出店は、「観光」と「日常」が交わる場所を選ぶことで、より安定した集客が見込めます。
店舗の広さや雰囲気もエリアごとに個性があるので、あなたのやりたいお店にぴったりの立地がきっと見つかるはずです。

当サイトでも、奈良県内のテナント物件を多数取り扱っております。気になるエリアがあれば、ぜひこちらのページからご覧ください。
まとめ

観光と日常がゆるやかに交わる奈良は、コンパクトな店舗での開業にぴったりの場所です。
家賃も比較的抑えやすく、人通りのあるエリアも多いため、無理のないスタートがしやすい環境が整っています。
「まずは小さく始めたい」そんな思いを叶えるなら、ぜひ奈良という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。