「店舗の7割はロードサイドに出店して成功している」——そう言われるほど、郊外型店舗の出店戦略は注目を集めています。
飲食・ドラッグストア・ジム…車で訪れる生活動線上にある「ロードサイド立地」は、業種次第で高い集客を実現できます。
この記事では、ロードサイド店舗の強みやデメリット、開業前に知っておくべき成功のポイントを、立地選びの視点から解説します。
ロードサイド店舗とは?

ロードサイド店舗とは、幹線道路沿いや郊外の交通量が多いエリアに構える店舗を指します。
一見すると「ただの郊外の店」に見えるかもしれませんが、実は立地や導線を味方につけることで、都市部よりも高収益を狙えるケースもあります。
ロードサイド店舗の特徴
ロードサイド店舗は、郊外や幹線道路沿いに出店する「車での来店を前提とした店舗」であり、以下のような特徴があります。
・広めの敷地に駐車場を併設している
・ドライブスルーを作りやすい
・ファミリー層向けの座席レイアウトに工夫がある
近年では、大型の複合施設内に複数の店舗が入る形も増えており、相乗効果による集客が期待されています。
また、こうした店舗では「立ち寄りやすさ」が売上に直結するため、立地選びや建物設計が重要になります。
看板の視認性や、車の出入りのしやすさなども、実際の集客力を大きく左右するポイントです。
ロードサイドと路面店の違い
「路面店」と聞くと、駅前や商店街の1階にある店舗をイメージする方が多いかもしれません。
実際、路面店とは建物の1階で、通行人が直接出入りできる「通りに面した店舗」のことを指します。ちなみに、その立地が都市部なのか郊外なのかは問いません。
つまり、「路面店=徒歩動線中心」「ロードサイド=車動線中心」という点に違いがみられます。
ロードサイド店舗のメリット

本章では、ロードサイド店舗ならではのメリットを紹介します。
①顧客のターゲット層が幅広い
郊外エリアや幹線道路沿いは、通勤者やファミリー層、シニア層まで幅広い層が車で訪れるエリアです。日常使いを目的とした来店が多く、リピーター獲得にもつながりやすいのが特徴です。
②車でのアクセスが良く集客しやすい
郊外では「駐車場無料」が当たり前という意識が強く、車移動の人にとっては大きな来店動機になります。店舗前に駐車スペースがあれば、立ち寄りやすさが格段に上がり、集客につながります。
③店舗面積が広く取りやすい
郊外立地ならではの広い敷地を活かして、品数を豊富にそろえた魅力的な店舗づくりが可能です。
また、イートインスペースや大型看板、ドライブスルーなども設計しやすくなります。チェーン展開に適した規格の店舗がつくれる点も、ロードサイドが選ばれる理由です。
④郊外で固定費が抑えられる
都市部に比べて地価が安く、広い土地でも賃料が割安に設定されているケースが多くあります。
また、都心部から地方へいくほど最低賃金や時給相場も低くなる傾向にあるため、店舗運営にかかる固定費(家賃・人件費)をトータルで抑えやすいのが郊外立地のメリットです。
エリア | 平均時給 |
首都圏 | 1,222円 |
東海 | 1,099円 |
関西 | 1,143円 |
(出典:㈱リクルート ジョブズリサーチセンター(JBRC)「アルバイト・パート募集時平均時給調査(三大都市圏)」)
ロードサイド店舗のデメリット

一方で、ロードサイド店舗には次のようなデメリットもあります。
①通行量と来店者数はイコールではない
ただ車が多く通るだけでは集客につながりません。ドライバーの意識が道路や信号に向いており、店に気づいてもらえないことも多いからです。店の存在を“認識”してもらうことが、まずは集客のスタートラインです。
②徒歩来店が見込みにくい
駅から遠い立地が多いため、徒歩で来店する層の獲得にはあまり向いていないのがロードサイド店舗の特徴です。そのため、ファミリー層や車利用者に特化したサービス設計が必要です。
③初期費用が高くなりがち
敷地が広いため、外構・看板・駐車場整備などにコストがかかります。設計段階から費用感を把握しておくことが大切です。「遠くからでも目に留まる店舗づくり」が求められるため、建物の外観など「見せ方」への投資が必須でしょう。
④維持・管理コストが増えやすい
敷地が広い分、清掃や除草、警備員の配置など日常的な管理コストがかさみやすくなります。
特に駐車場や外構まわりは劣化が早く、舗装の補修や照明設備のメンテナンスなど予期せぬ出費が発生することもあります。
ロードサイドで成功しやすい業種と向かない業種

ロードサイド店舗は、実は業種によって向き・不向きが明確に分かれます。事例をもとに、開業判断の参考にしましょう。
成功しやすい業種
外食チェーン・飲食系店舗 | ・ファミリーレストラン ・カフェ ・回転寿司 ・ラーメン店 ・ファストフード店 など |
遊び・エンタメ系施設 | ・映画館 ・パチンコ ・漫画喫茶 ・カラオケ ・ゲームセンター など |
買い物系店舗 | ・スーパー ・ドラッグストア ・乳幼児用品店 ・ホームセンター ・コンビニ家具 ・家電量販店 など |
暮らしのサービス店 | ・自動車販売店 ・整備工場 ・携帯ショップ ・ガソリンスタンド ・フィットネスクラブ ・銀行 など |
向かない業種
一方で、徒歩や公共交通機関を利用する人をメインターゲットにしている業態や、狭小スペースでビジネスが成立する業種は、この立地を活かしにくい傾向があります。
たとえば、以下のような業種です。
- 美容室・ネイルサロンなどのパーソナルサービス店
- 学習塾や語学教室などの教育系施設
- 小規模な雑貨店やギャラリー
- シェアオフィスやコワーキングスペース
出店前には「その業態は車社会と親和性があるか」を一度立ち止まって考えることが重要です。
ロードサイド店舗 出店前の確認ポイント

物件情報だけを見て「ここ良さそう」と、強い先入観を持つのは危険です。
ロードサイド出店の成功は、現地で「見て・感じて・確かめる」こと。地図では分からない「リアルな動線」や「見え方」が、売上を大きく左右します。
看板の視認性(見えやすさ)
まずは、ドライバーの目線になって、店舗や看板が認識できるかを確認しましょう。印象に残るひと言を添えた看板は、集客にもひと役買ってくれます。
ここで注意したいのが、看板の高さ・角度・交差点からの見え方です。近くに信号がない道路の場合は、車がスピードを出しやすく、店舗や看板が見落とされてしまう可能性があります。
そして夜間照明の有無。昼と夜、両方の視認性をチェックするようにしてください。
駐車場出入口の導線
ロードサイド店舗では、「入りやすさ」と「出やすさ」が来店率に直結します。駐車スペースにはゆとりを持たせ、最低でも15台程度は確保しておきたいところです。
出入り口では、入る車と出る車がスムーズにすれ違えるだけの幅があると安心です。
中央分離帯の有無
道路の構造にも注意が必要です。たとえば、中央分離帯がある道路では、反対車線から直接入れず、通過されてしまうリスクがあります。
車がどの方向からでもスムーズに入れるか、右折での進入がしにくくないかなどを、実際に現地で運転しながら確認することが大切です。
競合店の状況や客層とのマッチ
周囲に同業態が多すぎる場合、差別化や価格競争が必須になります。エリアのニーズと競合のバランスを見極めてください。
そのエリアに自店舗のコンセプトが合っているか、周辺の通行客や住民層とミスマッチがないかも事前に見極めておくべき重要なポイントです。
まとめ|ロードサイドは、車社会の強力な店舗戦略

ロードサイド店舗は、車社会にマッチした強力な立地モデルですが、すべての業態に向いているわけではありません。
事前の立地調査やターゲット設定、資金計画をしっかり行うことで、集客力を最大限に活かした開業が可能になります。
物件選びや土地活用の選択肢として、ぜひ参考にしてみてください。